倉鉢徹のページ: 八幡和郎-問題のある江戸時代新書-
 

2009年07月18日

八幡和郎-問題のある江戸時代新書-

江戸300藩を扱った「江戸三○○藩 最後の藩主」の評判がよろしくない八幡和郎の2009年の新書が「本当は恐ろしい江戸時代」だ。

江戸時代の農村部の人口推計の研究のために、寺の過去帳や代官所の宗門改め帳などの記録が、活用されていること。あるいは、江戸時代に人口が確実に増えていたことを無視している。

江戸時代の人口増は農村部の豊かさによる人口増が主であり、都市部は奉公人などとして流入した農村人口を不健康な環境によってすり潰す蟻地獄のようなものだった。これは「歴史人口学で見た日本」で既に語られている話。

この時代の農村は地域によっては農村と言うよりも手工業の生産地。生産した工芸品を都市部に売ることで現金収入を得ていた。
農業収入も検地による実収入高把握が頻繁にはなされていなかったため、生産性向上や新田開発による実収入高の増加は見逃されていた。
というように一部には豊かな農村部も存在した。一律に高い年貢に苦しみ飢饉で餓死する農民などという古い歴史観に縛られるのはやめにしてほしい。

石川英輔氏は江戸時代をやや持ち上げすぎな気配があるが、一方の八幡和郎氏は資料などをきちんとリサーチしていない。

八幡和郎氏が展開する「江戸時代暗黒論」は、
1.明治政府が自分たちの正当性を主張するため広めた。
2.戦後のマルクス主義経済学者などが江戸時代を暗黒中世と定義付けるため、年貢が重い、一揆だらけの暗黒時代と主張。
というように自らの正当性を主張するための工作活動。

「封建制」日本よりも「中央集権」の朝鮮のインフラは地方において皆無。首都においても京城は衛生的とは言いがたい街だった。
そのことはAmazon書評にも書かれている。

「現在の価値観で過去を処断することの危険性」2009/5/5 By海人
同一人物の視点による日本と外国との比較という点では、いまだ江戸時代の面影が色濃く残る明治初期に日本を旅行した英国女性旅行家イザベラバードの日本旅行記「日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー)」と同じ著者の朝鮮旅行記「朝鮮紀行―英国婦人の見た李朝末期 (講談社学術文庫)」を比較するのも良いだろう。


江戸時代暗黒論はテレビの時代劇の中のお話に過ぎない。


「本当は恐ろしい江戸時代」八幡和郎 、ソフトバンク新書
本当は恐ろしい江戸時代 (ソフトバンク新書)
ソフトバンククリエイティブ
2009-04-16

「江戸三○○藩 最後の藩主」八幡和郎、光文社新書(2004/3/17)
江戸三○○藩 最後の藩主 (光文社新書)
光文社
2004-03-17

「歴史人口学で見た日本」速水融、文春新書
歴史人口学で見た日本 (文春新書)
文藝春秋
2001-10

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posted by kurapat at 10:02| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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